アベノミクス円安にメリットはあるのか

アベノミクス円安にメリットはあるのか? 

? 【東洋経済オンライン 2013/5/19 08:00】

■ 代償はすでに顕在化している

 ドルに対して円の価値が25%下落したことは、「アベノミク
ス」が日本の活力を取り戻せることを確信させる最も有効な要
素の一つである。


しかし、円安にはメリットばかりではなく代償があることも忘
れてはいけない。
メリットが代償を上回る場合のみ、円安は経済成長に寄与する
だろう。


その代償はすでに顕在化しており、エネルギー、原材料、食料、
製造部品の輸入価格が上昇している。


競合企業に対する日本企業の費用優位性が生まれたことで輸出
拡大が期待できるというメリットはあるが、この傾向はまだ見
られない。
どの程度のメリットがあるかも不透明だ。



もう一度、代償について確認しよう。
円安の状況では、原油、自動車部品などのドルの価格が変わら
ない場合、日本が原油や自動車部品を同量手に入れるのに、よ
り多くの円を払わなければならなくなる。


昨年9月から今年3月にかけて日本の全貿易相手国に対する円の
名目価値は18%下落した。


同時期、単位当たりの円輸入価格は18%上昇した。


結果、昨年9月以降、価格調整後の実質輸入量は5%減少したが
名目輸入金額は12%上昇した。


つまり、日本は5%少ない輸入量を確保するのに、12%多く支
払ったことになる。


■ 円安は経済成長を阻む「悪いインフレ」を招く

これは日本の成長にとってはマイナスである。
家計の資産あるいは輸入企業の利益から中東の王族や中国の工
場主へと資金が流れるからだ。


インフレ期待をもたらすことから、日本にとっても悪いことで
はない、と言う人もいるかもしれない。
が、これは経済学的にはナンセンスだ。


インフレには「よいインフレ」と「悪いインフレ」があり、
後者は経済成長に悪影響をもたらす。


より少ない量を獲得するのにより多くを支払うのは悪いインフ
レである。


原油といえば、多くの人は日本の貿易赤字が定着しているのは
福島第一原子力発電所事故の影響で、日本が鉱物資源をより多
く輸入するようになったからだと考えているかもしれない。


が、原子力は日本の電力の30%を供給しているにすぎず、日本
の総エネルギー消費の10%程度である。


日本の原油LNG(液化天然ガス)など鉱物資源の輸入量は、2011
年2月〜13年2月までわずか6%しか増えていない。


一方、同時期に円の価格は28%上昇した。
10年に日本の鉱物性燃料輸入額はGDPの3.6%程度だったが、
12年にはこれが5.1%に拡大。


そして、今日の為替水準では、たとえドル価格上昇や輸入量の
増加がなかったとしても、6.5%に膨らむ。


もしドル価格そして(あるいは)数量が増えれば、輸入額はさら
に拡大し、戦後最高水準となる。


これが家計の資産と企業の利益に与えるダメージは極めて大きい。


こうした代償がメリットによって相殺されればよいが、そのメ
リットはまだ表れていない。


多くのエコノミストによれば、円安が実質輸出量を押し上げる
には少なくとも1年を要するとされ、その影響がどの程度かに
ついては諸説ある。


その間、日本の実質輸出量は減少し続けた。
13年1〜3月期の日本から世界への輸出量は前年同期比10%の水
準まで下がり、07年後半の景気後退前のピークから比較すると
なんと30%も低迷している

 
少なくともこれまでのところ、輸出の面においては、輸出先で
価格を引き下げることで市場シェアを獲得することではなく、
輸出先でドルやユーロなどの価格を据え置き、多くの円を獲得
することで円安を活用している。


自動車、テレビ、機械類1台当たりの利益は押し上げられたが、
必ずしも販売量が増えたからではない。

3月時点で円は日本の主要な貿易相手国の通貨に対し、昨年9月
比18%安かった。


輸出業者はこれを利用して円の受け取りを16%増やしたが、実
質輸出量はほとんど増えなかった。


■ メーカーの雇用増に結び付くのか

自動車業界を見ると、日本メーカーは今でも世界のトップを争
っている。


自動車メーカーは、この円安を外国での価格引き下げか多くの
円を獲得するのに利用することができた。


たとえば、円が1ドル=78円から98円に下落したとすると、
トヨタ自動車は輸出自動車の価格を2万4000ドルから、たとえば
1万9000ドルに引き下げることができる。


これで、円ベースでほぼ同額(約18万7000円)を獲得でき、
より多くの自動車を販売できる。


あるいは現地価格は2万4000ドルのままで1台当たり23万5000円
を円ベースで得ることもできる。


昨年9月から2月にかけて、自動車メーカーは後者を選んだ。
円での自動車価格は15%上昇し、輸出で得られた金額は12%増
えたが、実質的な数量は2.4%減少した。


これは、自動車メーカーに投資しているヘッジファンドにとって
はすばらしい話だったのかもしれないが、これが、メーカーの
雇用増や新たな設備増強にどれだけ結び付くのだろうか。


これまでのところ、日本企業の主要輸出事業者の価格戦略
意味しているところは、経済全体の成長をもたらす乗数効果
存在しないことである。


おそらくこの効果は年末までには表れるだろうが、円安メリッ
トの大きさはまだ不透明である。


ざっと一読した程度では、内容を理解できないものであるが、
閲覧なさった方はどうでしたか?


いずれにしても、現時点でのアベノミクスの評価は、まだでき
ないということのようです。
即ち、景気が好転したと早合点すべきではありません、という
ことのようです。


勿論浮かれる積りはサラサラ無いのですが、少しの希望の光で
もあればとの思いから、好材料を捜しているのが私の実情です。