瓦版斜め読み(昨年未勝利左腕がMVP! 日本ハム・吉川、大変身の背景)

前年未勝利の投手が、いきなり最優秀選手(MVP)に輝いた
のは両リーグを通じて初の珍事だった。
日本ハムの6年目・吉川光夫投手は「リーグで1人しか選ばれ
ない大変な栄誉。
僕でいいのかな、というのが本音」と表彰式が行われた21日
の会見の席では少し照れくさそうに大躍進の1年を振り返った。


2006年の高校生ドラフトで、田中将大投手(現楽天)の抽
選に敗れた日本ハムから外れ1巡目指名を受けて入団した。


広島・広陵高時代に甲子園出場経験はないが、最高球速150
キロを誇る直球を武器に1年目の07年6月8日のヤクルト戦
で早くも初勝利。
この年は4勝を挙げて期待を集めたが、以後伸び悩んだ。


昨季まで3年間は勝ち星すら挙げられず、昨年は4年遅れて入
団してきた同い年の斎藤佑樹投手の陰に隠れた存在でしかな
かった。


だが、今季からチームの指揮を執る栗山英樹監督は、大リーグ
へ移籍したダルビッシュに代わる素材として吉川へ目を付けた。


「今年ダメならオレがユニホームを脱がす」とクビ宣告までし
て左腕の奮起をうながした。


 ■監督のひと言で目覚める


「四球を出しても関係ないから、腕を振ってこい」。
吉川自身が、今年変身できたきっかけとして挙げるのは、
指揮官のかけてくれたこの言葉だ。
制球に気を遣うあまり、フォームがこぢんまりとまとまりかけ
ていた左腕がこれで目覚めた。


4月1日の札幌ドーム。西武との開幕3戦目に先発した吉川は、
中村に浴びたソロ本塁打による唯一の失点で敗戦投手となった
が、「あれだけストレートで押せた試合はなかった。
真っすぐの手応えが一番あった」と大きな自信を得た。


以後、今季は173回3分の2を投げ、防御率はリーグトップ
の1・71。
勝ち星もチーム1の14勝をマークし、日本ハム3年ぶりの
優勝の立役者となった。

こういう成績が収められたのも監督の後押しのおかげ。僕を育ててくれた」と感謝する。


 ■来季こそ200イニング 

昨年の同じ表彰式の日。
ファーム(イースタン・リーグ)の防御率、勝ち星、勝率のタ
イトルを独占した吉川は、1軍の表彰が盛大に行われる前の午
前中の式典に出席していた。


「だから不思議な感じ。(あのとき)来年は1軍のほう(の表
彰式)に出たいなと考えていた。
こういう結果になってうれしい」としみじみ。


日本シリーズ終了後、左ひじの炎症が判明。
現在はまだボールは握れない状態で、来春開催のWBCへの参
加については「(出たい)思いはあるが、ひじや肩の状態次第」
と明言は避ける。


「年内にキャッチボールを再開できれば」と完全復帰にはまだ
時間がかかりそうだ。


それでも「今年のような結果(成績)を来年も続けないと意味
がない」ときっぱり。
「一つ一つのボールの精度を上げて、200イニング(登板)
を何とかクリアしたい」


と来季も投手陣の柱としての活躍を誓う。



遅咲きの同投手には、大いなる拍手を贈りたい。
それにしても、栗山監督の試合での采配のみならず、選手の
力量を見抜く眼力にもさすがと言いたい。


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