ネットでデマが広がる理由

ネットの心理メカニズム
碓井 真史 社会心理学者/新潟青陵大学大学院教授/スクール
カウンセラー】 2013年5月8日 22時16分 配信


人と人とのコミュニケーションがあるところには、デマ(流言)が起きます。


新しいコミュニケーション・ツールができるたびに、問題になります。
よくある嘘としては、

(1)「○月からLINEが有料になる」「タイムライン機能の利用ごとに    ○円かかる」〜
(2)「18歳未満は利用できなくなる」「○月でLINEサービスが終了す    る」〜
(3)「運営側がメッセージを勝手に閲覧する」「LINEがハッキングさ    れて個人情報が漏れる」〜といった内容。


デマとは、誰かが意図的に本当ではないとわかっていて広げていくものです。


デマは、「デマゴギー」が語源。
デマゴギーとは、「相手を中傷し、悪評を招くように流す、虚偽の情報」。


またデマゴーグとは、「感情的・情緒的アピールを駆使して大衆の激情や偏見に訴え、権力(公的ポスト)を獲得・維持しようとしたり、その主張を拡散しようとする政治家」のことです。
                   (日本大百科全書


■嘘とは

意図的に事実ではないことを語るのが「嘘」ですが、だますつもりはなくても、結果的に事実と反すれば「嘘」と言われることもありますね。


■流言とは

それに対して、本来の意味からいえば。
流言とは、正確ではないのに、口コミを通して広がっていいくことがらです。
流言は、だれかがわざと広げようとしているのではありません。


広げている人に悪意はなく、確信している場合もありますが、半信半疑ながら話題に出して、結果的に広がっていくこともあります。


自分だって信じていなくても、話題に出しただけで広がっていくのが、流言(デマ)です。


■デマと流言

このように本来は違う意味ですが、流言という意味で「デマ」
や「嘘」が使われることもありますね。


ネット上の誤った情報も、意図しない流言のときもあれば、誰かが意図的に作り出した嘘の内容が、悪意のない人によって広がることも多いでしょう。


時には、善意によって広がることも多いでしょう。


■意図も悪意もなくても、流言(デマ)が広がる理由

社会心理学の研究によれば、流言が発生し、広がる条件として
次の3つがあります。

   1.重要であること。
    たとえば、命や財産にかかわるような重要なことであるほ
    ど、流言は発生しやすくなります。
   2.あいまいさ。はっきり分かっていることは流言が起きにくい
    のですが、良く分からない事柄に関して、流言は発生しやす
    くなります。
   3.不安。
    人々の不安が高いほど、流言は発生し、広がっていきます。



■LINEでなぜ流言(デマ)が広がりやすいか

たとえば、LINEを使っている人にとって、重要なことがらほど、
流言(デマ)は広がりやすくなります。


またLINEは、急激に広がったとはいえ、まだあいまいでよくわからない部分があるということも、有料化や管理者がのぞき見するといった嘘の流言(デマ)が広がりやすいことにつながるのでしょう。


これらは、重要であり、あいまいな情報です。


さらに、何かの理由でユーザー全体に不安が広がっていれば、
さらに流言(デマ)は伝わりやすくなるでしょう。


災害などの社会不安もあるでしょうし、思春期の子たちが親子
関係や受験などで不安になるやすい時期もあるかもしれません。


また、ネットは匿名で姿が見えないウソをつきやすいメディア
でもありますので、意図的な嘘や無責任な発言も伝わりやすい
のでしょう。


■インターネットと流言(デマ)

流言(デマ)は、もともとは個人の口コミにより伝わるものです。


しかし、インターネットによって、個人が一度に大量の情報発
信をすることが可能になってしまいました。


マスメディアなら、多くのチェックが入るのに、ネットではノ
ーチェックで広がることもあるでしょう。


本当は、拡散させる前に少しネット上でも調べて見れば、「そ
の話は嘘」という情報も見つかるはずなのですが。


ネットで発言することは、駅前でマイクで話すようなものです。
リアルでそのようなことをするとすれば、だれでも話す内容を
よく考えるでしょう。


ところが、ネットコミュニケーションの特徴として、本当は世
界に開かれているのに、まるで個人的に内緒話をしているよう
な感覚になってしまうことがあります。


無自覚のまま、無責任に、偽りの情報が、広がります。
それも、口コミの何万倍もの速さで。
大きな影響力が生じる情報発信は、「チェック、ダブルチェッ
ク」です。


■インターネットによる伝達欲求の高まり

人は、自分が知った情報を人に伝えたくなります。
芸能人を見たり、事故を目撃すれば、なおさらです。


「ねえ、ねえ、聞いて、聞いて」と、周囲の人におしゃべりし
たくなるでしょう。
おしゃべりだけなら、問題はありません。


でもさらに、情報を広げるネットという便利な道具を持てしま
った私たちは、しっかり自覚しないと、情報伝達欲求が爆発的
に大きくなってしまいます。


さらに、不特定多数の人に広がることを意識できなくなります。


■ネットコミュニケーション

こうして、ネット上の情報漏えいや、プライバシー侵害や、様
々な流言(デマ)が飛び交うことになるのです。


個人的な人間関係が壊れたり、大きな社会問題になることすら
あるでしょう。


現代社会で生きていく私たちは、便利だけれど危険な、ネット
というもの、ネットコミュニケーションというもの、そして私
たちの心の仕組みを、知らなくてはならないでしょう。



そうですね。ネットを不用意に使用することは、社会に如何に
大きな影響を及ぼすかに想いを致す必要がありことを重々知って
おくべきですね。



少なくともイッチヨマエの大人であれば、当然の責務であろうと思います



大人でなければ、未熟児とでも名付けておきましょう。