平成の「徳政令」期限到来で経済危機
リーマン・ショック後の経済危機下にあった2009年当時、
金融担当大臣だった亀井静香氏が時限立法のかたちで推進した
平成の徳政令「中小企業金融円滑化法」が、今月末で期限切れ
を迎える。
この法律を簡単に説明すると、経営が厳しい中小企業が抱える
借入金の返済期限延長や金利減免などの措置を、銀行などの金
融機関に対し“半強制的に促す”内容。
この効力が失われた途端に、大量の中小企業が倒産すると予想
されている。
東京商工リサーチが全国407の金融機関に対して行なった調
査によると、「中小企業金融円滑化法」に基づいて融資の返済
猶予などを申し込まれた件数は、2012年9月時点で実に3
90万件以上もあり、金額にして106兆円を超える。
それに対し、返済期限の延長や毎月の支払いの減額、金利の減
免などの返済条件の変更が実行されたのは約363万件で、金
額にして約99兆5600億円。
その実行率は金額換算で93.8%と異常に高い。
この特別措置のおかげで経営状態が回復した企業はいいが、問
題なのは“不良債権予備軍”の企業がどれくらいの割合で存在
するのかということだ。
東京都産業労働局金融部が、昨年秋に都内の中小企業1万社を
無作為抽出して行なった調査データがある。
その中の「金融円滑化法終了による経営への影響」という質問
に対する回答は驚くべきものだった。
「特に影響はない」と回答した企業はわずか12.4%で、
「経営継続が困難となる」と答えた企業が48.4%にも上っ
たのだ。
この割合を上記の融資条件変更が実際に行なわれた総額である
99兆5600億円に掛けると、約50兆円にも達する。
債務返済不能に陥る確率の高い“不良債権予備軍”は、莫大な
規模なのだ。
「融資条件を変更した企業のうち、半数近くが経営困難になる
と回答したのは衝撃的な結果です。
ただ、これらがすべて不良債権化するわけではありません。
返済期限の延長や、毎月の支払額を減らすといった内容の条件
変更をした企業の場合、経営状態が回復する可能性も十分に残
されています。
本当に深刻なのは、金利の減免や債権カットの措置を受けてい
る企業です。
これらはかなりの確率で不良債権化する恐れがあると考えてい
いと思います」
帝国データバンクが昨年末から年明けにかけて全国約2万30
00社を対象に調査したデータによると、「中小企業金融円滑
化法」を利用して融資条件の変更を受けた企業のうち、
債権カットや金利の減免の措置を受けた企業の割合は計14.
6%であった。
この数字を上記の99兆5600億円に掛けると、約14兆5
000億円。
これだけの不良債権が一気に噴出すれば、大型の補正予算を組
んで行なう景気刺激策の効果などあっという間に吹き飛んでし
まう。
好調に見える「アベノミクス」だが、砂上の楼閣にすぎないの
かもしれない。
■週刊プレイボーイ13号「アベノミクスが日本経済を地獄に
突き落とす!!」より
難しい数字を駆使しての経済論議は、元々敬遠していたのでは
あるが、平成の「徳政令」の期限切れに伴う、経済変動に関し
ては、例え難しかろうとも、強い関心を寄せざるを得ない。
日本経済の先行きに、明るい展望を見い出せるのか否か、祈る
ような気持ちで、これからの成り行き、ニュースに見入ってい
く積もりです。